チョルフ川とバルハル川が合流する地域は、黒海地方でも是非訪れたいスポット。夏にはたくさんの種類のフルーツがあちこちで見かけられ、愛嬌のある小さな町・ユスフエリを中心に中世グルジア王国の教会などが点在している。またユスフエリ付近はラフティングスポットとして知られており、5月から9月までがシーズン。ただし、川の水位が最も高くなるのは6月半ばから7月半ばで、ラフティング目的ならこの期間に行くのがベストだろう。
ユスフエリからバルハル、ヘヴェックを通り、カチカル・ダーラルへの入口であるオルグンラルへ向かうことができる。ヘヴェックとオルグンラルにはペンションがあり、オーナーはトレッキングについて詳しい情報を提供してくれる。ガイドつきのトレッキングは、ユスフエリでも手配することができる。またユスフエリからチョルフ川に沿って南西約7キロのところにはテキカレという町があり、ここにもCemil’s Pensyonというかわいいペンションが一つある。
中世グルジア教会
テキカレから約6キロ離れたところにはドルトゥキリセ(4つの教会)がある。その名前とは異なり現在はたった一つの教会が残っている。バルハル教会と同じスタイルの教会で、ドームがなく非常にシンプルなインテリア。ダヴィド大王によって修築された。ヤイラ(高原)はドルトゥキリセから約2キロと大変近く、この教会はその後もモスクに変えられることはなかった。フレスコ画の跡も多少残っている。
ユスフエリから東に約11キロ行くと、イシュハン教会がある。聖母マリアに捧げられたこの教会の建設は7世紀に始められ、1008年に完成した。祭司ザカリアスなどが描かれたフレスコ画などが見られるが、興味深いのは内部よりも外部の蛇とライオンのレリーフ。11世紀のものである。
ユスフエリからエルズルム方面へ向かう道にはトルトゥム湖があり、付近のトルトゥム滝は訪れる価値あり。トルトゥム湖の南にはチャムルヤマチムラへと伸びる7キロの道があるが、この村にはゴシック式グルジア教会の代表作・オシュクヴァンク教会がある。973年にダヴィッド大王により建設されたタオ・グルジア文化の傑作である。トルコにあるグルジア教会の中で最も保存状態がよく、また柱に施された幾何学模様もかなり細かい。教会からの眺めも素晴らしい。
10世紀後半に建てられたハホ教会はさらに南にある。グルジア王国のダヴィッド大王が建てた最初の教会である。ライオンやキマイラのレリーフや、ヨナを飲み込むクジラ(一見犬に似ている)を描いたフレスコ画などがある。
18世紀にモスクに変えられ現在も使用されており、礼拝の時間以外は通常閉まっている。訪問の際にはモスクへの寄付金を求められることもあるが、その際は快く寄付するのがいいだろう。
ユスフエリの東・オルトゥとバナ
交通手段の選択肢は少ないが、自分の車があったら是非訪れてみたいのがナルマン-オルトゥ-バナ地方。ポプラの木と緑の大地がコバルトブルーの空と赤茶けた絶壁にコントラストして、美しい風景が広がる。オルトゥにはグルジア王国により建てられ、オスマン帝国により修復された城塞がある。城塞は鍵がかかっているが、市役所に行けば鍵を開けてくれる。
オルトゥの北にあるバナには7世紀の教会がある。バナの教会はクリミア戦争の際にオスマン帝国によって要塞化され、1877年の露土戦争の際にはロシア軍により教会のドームは爆破された。その後石材のほとんどはオルトゥにある教会の建設に使用された。
バルハル-ヘヴェック-オルグンラル
このルートはユスフエリからカチカル・ダーラルへ向かう際の通過ルートだが、美しい自然が広がり、カチカルダーラルに登らない人も是非訪れてみたい。バルハル(アルトゥパルマック)はユスフエリから約30キロ、ドルムシュで約2時間かかる。標高約1300メートルの村には木造の家が散らばり、高山植物に囲まれいかにもマウンテン・ヴィレッジという雰囲気。いくつかのペンションがあるほか、小さいカフェやレストランなどもある。バルハルにある教会はグルジア王国の王・ダヴィッド大王が建てた最後の教会。構造はドルトゥキリセとほとんど同じだが、多少小さめ。村のモスクとしても長年使われたため保存状態もよい。鍵がかかっている場合は、隣にある学校に問い合わせると開けてくれる。
バルハルからヘヴェック(ヤイララル)への道は風景がきれいだが道が悪く、20キロの道のりは約2時間かかる。ヘヴェックにはオスマン朝時代の橋以外に特に見どころはないが、初夏は花畑の間を小川が流れ、絵になる風景が広がる。ここにあるアルトゥンアイ・ペンションのオーナーはカチカルダーラルへの登山ルートなどの情報に大変詳しく、宿泊客も大抵登山目的で来ている。ちなみにヘヴェックからユスフエリへのドルムシュは大抵一日に一本しかなく、しかも朝非常に早い時間に出発する。
ヘヴェックからさらに眺めの良い道を一時間ほど歩くと、カチカルダーラルへの入口・オルグンラルが見えてくる。普通ドルムシュはヘヴェックが最終点だが、運転手と交渉すればオルグンラルまで行ってくれるかもしれない。ここにも小さなペンションがあり、周りにほとんど何もないがペンション自体は快適である。
カチカル・ダーラル
ポントス山脈の東端にあるカチカル・ダーラルはトルコの注目すべきトレッキング地域である。3972メートルの最高峰はアララト山とシュプハン山に次いでトルコで3番目の高さで、その美しい風景は「小さなコーカサス」、「ポントスのアルプス」とも呼ばれる。カチカルとはもともとアルメニア語で、かつて東部アナトリアに多く存在した奉納用の十字架や墓石などの彫刻物を意味する。カチカル・ダーラルは氷河期の後期に形成され、最高峰の北斜面にはいまだに氷河期の面影が残っており、2600メートルを超えたところでは何百もの湖が点在している。
定住地が周辺に多いせいか、カチカル・ダーラルに野生の動物はほとんど生息していない。熊、猪などは中標高の森林地帯で見かけられ、また狼や野生ヤギは地元の人々の狩の標的にされている。野生鳥などが比較的多く見かけられるほか、特に夏は野生の植物がひろがり多くの種類の蝶々が舞っている。サシバエなども多いので特に注意が必要。
この地方では昔から多民族が共存していたため、村の名前はアルメニア語やグルジア語がほとんど。たとえば-evitはアルメニア語で高原(トルコ語でyayla)を意味する接尾辞である。
カチカル・ダーラルに登る際、黒海側のアイデルやチャト、ユスフエリ側のバルハルとアイデルの4つの村のいずれかが起点となる。黒海側から登る場合、道の状態は良いが混雑する場合もあるほか、ほとんど毎日標高2800メートル地点までが霧に覆われる。ユスフエリ側からのトレッキング・コースは多少厳しいが、天候は安定している。
トレッキング・シーズンは6月後半から9月で、この時期は最も霧が少ない。真夏には山中の透き通った湖で泳ぐこともできる。
一日で終わるコースもあれば、10日間カチカル・ダーラルで過ごす人もいる。最も一般的なのはヘヴェック-アイデル間を、3日間かけてトレッキングするルート。どちらにしても防寒服やテントなどの登山用具一式を備える必要がある。