パムッカレ・ヒエラポリス遺跡(Pamukkale ve Hierapolis)

パムッカレのランドマークである石灰棚は、何千年も前にできた自然現象で、そのそばにある遺跡・ヒエラポリスとともにユネスコの世界遺産に登録されている。この自然現象は、ここから湧き出る温泉中の二酸化炭素が露天し、残ったカルシウムが流れ出て石灰石を構成してできた。ユネスコの世界遺産登録後、ホテルの建設などでパムッカレの観光地化は進み、「綿の城」は白さを一時失いかけた。しかしその後、石灰棚のそばのホテル群は取り壊され、石灰棚への入場は裸足のみとなるなど、近年またパムッカレは美しさを取り戻しつつある。そのそばのヒエラポリスはローマ時代に栄えた都市の遺跡で、やはり温泉治療で有名だった。

歴史
ペルガモン王国の王ヒメネス2世によってヒエラポリスは建設された。紀元前129年にローマ帝国の属州となった後も、温泉治療をはじめ金属業などがこの地で盛んになった。紀元後17年と60年には立て続けに震災を被ったものの、ヒエラポリスは常にローマ皇帝にとって特別な都市であったため、すぐに再建された。市民の間ではローマ皇帝は崇拝されていたが、同時に太陽神アポロやその母レトに対する信仰も強かった。
一方、ユダヤ人が多かったため、キリスト教はほかの都市に比べて早く浸透した。ヒエラポリスは聖書の「コロサイの信徒への手紙」にも登場する。使徒フィリポはここで彼の7人の息子とともに殉教したといわれている。
ビザンツ時代になるとヒエラポリスはアラブ人やトルコ人の侵攻に悩まされ、ついに12世紀にはセルジューク朝によって征服された。さらに1334年の地震のあとには住民はほかの都市へと移住し、ヒエラポリスは廃墟となった。1957年にイタリアの発掘隊が発掘に着手するまで、この地は眠りについていた。

ヒエラポリス遺跡
残念ながら石灰棚で温泉につかることはもうできないが、ヒエラポリス遺跡の中には古代の温泉プールがあり、入場料を払って使用することができる。この温泉プールのそばには2世紀のローマ浴場を修築してできた博物館やビザンツ時代6世紀に建てられた教会がある。
アポロ神殿の現在の遺跡は3世紀のものだが、もとの神殿は紀元前2世紀に建てられた。昔ここではディディムやデルフィのように、去勢された僧によって信託が行われており、信託のインスピレーションの源として神殿の隣にあるプルトニウムが使われていた。プルトニウムは地獄の神プルートに捧げられたもので、その穴からは今日も水の流れやガスが噴出す音が聞こえる。このガスは実際に危険な有毒ガスで、硫黄と二酸化炭素の合成ガスだと考えられているが、言い伝えによるとこの僧たちは穴へ入って有毒ガスを吸っても無事だったという。
遺跡内にはハドリアヌス帝とセプティミウス・セヴェルスによって建てられたローマ劇場もある。現在もフェスティヴァル会場として使われているが、そのレリーフは大変美しい。このローマ劇場では7000人もの観客収容が可能。
都市城壁の外側には、使徒フィリポの殉教碑がある。80年に殉教したフィリポのため、5世紀に建てられたが、彼の墓は見つかっていない。ここからのヒエラポリスと石灰棚の眺めは絶景。
殉教碑から西へと向かうと、完全に廃墟となったヘレニズム時代の劇場がある。ここから見渡すと、下方には2世紀に建てられた大きなアゴラがあり、そのそばにはヒエラポリスのメイン通りがある。この道の両脇には円柱が続いていて、北側の出口に向かうと右に古代の公衆トイレがある。このトイレは大きく、上・下水のシステムがあった。メイン通りの終わりには84年に建設されたドミトリアヌス帝の門があり、それを抜けると2世紀のローマ浴場跡(4世紀に教会になった)と小アジア最大のネクロポリス(墓地)がある。この墓地は2キロにもわたり、昔治療のためにヒエラポリスの温泉を訪れたものの、願いかなわず死んでいった病人たちのお墓が並んでいる。

温泉
昔と変わらず、今日でもパムッカレの温泉は有名。パムッカレから少し離れたところにあるカラハユト村では、クルムズ・ス(赤い水)と呼ばれる鉄分を多く含んだ温泉がある。パムッカレから湧き出る温泉水は約35度だが、カラハユトの温泉は55度と少し熱め。この温泉水を利用した多くのホテルが周辺に点在する。
パムッカレの温泉水にまつわる言い伝えとして、次のような話がある。
その昔、心は優しいが大変醜い娘がパムッカレに住んでいた。同年代の娘たちは皆結婚したのに、この娘はあまりにも醜かったため誰からも相手にされなかった。ある日娘は悩んだ末、パムッカレの石灰棚から身を投じた。そこを通りかかった青年は水の中で横たわっている娘を助けに駆け寄った。抱き起こしてみると今まで見たこともないような美しさに驚いた青年は、意識を取り戻した娘にプロポーズした。「私はこんなに醜いのに」と言った娘に、青年は「君のような美しい人はどこにもいない」と答え、水鏡で自分を見るように促すと、娘は本当に自分の醜さが消えたのにびっくりした。結婚した2人は末永く幸せに暮らした。
この話から、パムッカレの温泉が美容にいいということがわかる・・・