ギョレメとその周辺(Goreme)

ギョレメは「見えざるもの」の意だが、これはこの村につけられた4番目の名前である。ビザンツ時代にはマティアナ、アルメニア人にはマカンと呼ばれ、トルコ語でも以前はアヴジュラルと呼ばれていたが、最後にギョレメという名の教会群にちなんで改名された。
ギョレメはカッパドキア観光の中心地。有名なギョレメ野外博物館もギョレメから数キロ離れたところにあるほか、ギョレメにはいまだに洞窟の家やきのこ岩からできた家に住んでいる村人がいる。1980年代にこの村では観光業が盛んになり始め、メイン通りには旅行代理店や絨毯屋、ペンションなどが並んでいる。観光地化が進んだとはいえ、この小さな村の周辺にはカッパドキアらしい風景が広がる。鳩の糞は集められて肥料として使われたり、交通手段はロバ、水は洞窟にある貯水池から引かれるなど、村の住民は伝統的生活を続けている。
ギョレメの丘の上には2つの教会がある。カディル・ドゥルムシュ教会(この地域の地主の名にちなんでつけられた)は7世紀のもので、当時教区教会であった。上階にはギャラリーがあり、外側にはゆりかごの形をした墓がある。
もうひとつの教会は11世紀のユスフ・コチ教会で、6ではなく5つの柱があることで有名。フレスコがの保存状態は大変よく、ゲオルギウスとテオドロスの竜退治やコンスタンティヌス1世と妻ヘレナが聖十字架とともに描かれている。祭壇のそばにある4つの福音伝道者のフレスコ画は多少損傷を受けている。
ギョレメにはオスマン朝時代に建てられた家が残っており、現在修築され「コナックトゥルクエヴィ」という名のレストランとなっている。ここはもともとオスマン帝国の高官であったメフメト・パシャの家で、ハレムリックとセラムルックにはアフメット3世の宮廷画家によって描かれたフレスコ画がある。


エルマル教会のフレスコ画
エルマル教会のフレスコ画
ギョレメ野外博物館

ギョレメからユルギュップ方面へ2キロ離れたところにある。カッパドキア地方最大のキリスト教遺跡。ここにある教会には30を超えるフレスコ画が残っている。6,7世紀の教会はほとんどが崩れかけているが、それ以外の教会はすべて聖像破壊論争(8世紀)の後、9世紀から11世紀にかけて建てられた。
教会群の中で最も美しいのはトカル・キリセで、ほかの教会よりは50メートルギョレメ中心地寄りにある。この教会はエスキ・キリセ(古い教会)と呼ばれる教会の中央部を使って増築されたもので、内部の鮮やかなブルーが印象的。キリストの生涯を描いたフレスコ画は10世紀のもの。キリスト教界で4世紀から6世紀の間に描かれたフレスコ画の特徴を持つ、クラシックなスタイルとなっている。
イェニ・キリセ(新しい教会)内部の絵画は美しいビザンツ芸術の代表作である。イエス・キリストが十字架にかけられ復活するまでが描かれている。
これらの教会以外にギョレメで最も知られているのは11世紀のエルマル・キリセ(りんごの教会)、カランルック・キリセ(暗い教会)、チャルクル・キリセ(サンダルの教会)の3つである。これらの古典ビザンツ様式に影響されており、柱で支えられた中央ドームにはキリストが大天使、熾天使とともに描かれている。とくにエルマル・キリセのフレスコ画は美しい。エルマル・キリセ内の色彩はグレーが主なのに対し、カランルック・キリセでは藍銅鉱から取れた貴重なブルーの染料が使われている。
聖バーバラ教会には聖バーバラのほかに、珍しい虫の形が描かれている。当時おそらく何らかの意味を持っていたと思われるが、詳しいことはわかっていない。
ユランル・キリセ(蛇の教会)は聖オヌフリウスが描かれていることで有名。オヌフリウスは4、5世紀のエジプトの世捨て人で、ナツメヤシのみを食べて暮らしており、葉でできた腰布のみを着用していたという。聖オヌフリウスの向かい側には、聖十字架を持ったコンスタンティヌス大帝とその母・聖ヘレナの姿が描かれている。聖へレナは夢で聖十字架を見たあと、80歳の老齢で聖十字架を探しにイェルサレムへと赴いたという。そこで3つの十字架を見つけた聖ヘレナは、どれが本物の聖十字架かを見分けるためにある青年の棺の上にひとつづつ十字架を置いたという。聖十字架が置かれたとき青年は復活したという。
このフレスコ画の隣には、軍人であり聖人であったゲオルギウスとテオドロスが蛇を踏みつけている姿が描かれている。聖テオドロスはローマの軍人で多神教を拒み、ポントス王国・アマセア(現在のアマシア)にある地母神の神殿を焼き払った。彼は拷問されたのち、燃え盛る炉に投げ込まれた。
ユランル・キリセとカランルック・キリセの間には修道院の食堂があり、50人ほどが座ることができる石を浮き彫りしてできたテーブルがある。
ギョレメ博物館以外にもいくつかの教会がギョレメ付近にあるが、現在公開されておらず、見学には文化観光省の許可が必要。12世紀にアルメニア人キリスト教徒による絵画が残されている聖ユーステス教会、4つの柱に支えられたクルチュラル。キリセ(剣の教会)、ライオンの巣穴に入った聖ダニエルが描かれている聖ダニエル教会などがある。サクル・キリセ(隠れた教会)に描かれている聖書のシーンは、背景にきのこ岩などカッパドキアの風景が描かれていて面白い。


チャウシン
ギョレメからアヴァノス方面約6キロのところにある村。村の情報には丘があり、ここには以前カッパドキア巡礼の中心地であった洗礼者ヨハネの教会がある。5世紀に建てられたこの教会にはカッパドキア地方で唯一の奉納の穴があり、ここにはこの地で生まれた聖ヒエロンの手も奉納されているといわれている。教会内のフレスコ画は6世紀から8世紀のもので、巡礼者たちが描いたと考えられている。
洗礼者ヨハネ教会の近くには、「鳩の家」と呼ばれる教会があり、ビザンツ皇帝ニケフォロス2世フォカスが964年にキリキアとの戦いの際、カッパドキアを通過したのを記念に描かれたフレスコ画がある。ニケフォロス2世フォカスは洗礼者ヨハネ教会へも巡礼した後修道院生活にあこがれるようになり、アトス山へ行くのを夢見ていたという。


ゼルヴェ
ゼルヴェ
ゼルヴェ
アヴァノス-チャウシン間の道から約3キロ入ったところには、過去の隠遁者生活を垣間見ることができるキリスト教修道院がある。この修道院の歴史は9世紀よりも前にさかのぼる。ゼルヴェには3つの谷があり、1952年までトルコ人が住んでいたが岩が落ちるなど危険になったため、住民はほかの場所に移動した。
修道院の大部分は自然にできた凝灰岩の形を利用した構造となっている。この谷には修道院のほかにオスマン朝時代のモスクもあり、モスクの一部も修道院の続きである岩が利用されている。
修道院の見学は一種の冒険で、懐中電灯や汚れてもよい服が必要。閉所恐怖症の人にはお勧めできないが、高さを怖がらない冒険好きの人たちにはちょうどよい。
多くの教会や小礼拝堂が谷のあちこちで見られ、そのほとんどは十字架が彫り込まれている。フレスコ画にくらべてこれらの十字架が圧倒的に多いのは、修道院の偶像崇拝に反対する態度の表示だと考えられる。ユズムル・キリセは数少ないフレスコ画つきの教会のひとつで、葡萄の木が赤と緑で描かれている。
ゼルヴェの付近にはパシャバーというカッパドキアで一番風景のよい谷がある。以前ここのきのこ岩の上ではキリスト教隠遁者達が好んで暮らしていたため、「僧の谷」とも呼ばれていた。ここではひとつの岩から2つまたは3つのきのこ岩が飛び出しており、そのなかには高所で生活していたことで有名な聖シメオンに捧げられた教会がある。


オルタヒサル

ギョレメとユルギュップの間にある村。オルタヒサルはトルコのレモンマフィアの貯蔵庫で囲まれていて、貯蔵庫自体も洞窟からできている。村自体は平和でフレンドリー。
オルタヒサルの見どころはウチュヒサル同様、かつて村人の全部が住んでいた要塞風の大きな岩である。高さ86メートルの要塞からのオルタヒサルの眺めは美しい。
オルタヒサルの周辺にもいくつか教会があるが、アクセスが難しいので訪れる人はほとんどいない。パンジャルルック・キリセとその修道院に残るフレスコ画の保存状態はよく、キリストの洗礼や受胎告知などが描かれている。ほかにもバルカンラル・キリセやサルジャ・キリセなどの教会がある。

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