エルズルム(Erzurum)

標高約2000メートルに位置する東部アナトリア地方最大の都市。ペルシア、コーカサス、西アナトリアを繋ぎ地理的にも重要な位置を占めていたため、昔から様々な帝国・王朝の支配権争いの的となった。町の雰囲気はかなり保守的で、以前ヴェールなしの女性の姿はほとんど見かけることはなかったが、最近は郊外にある大学の拡大に伴い、街中でヴェール無しの学生によく出くわすようになった。真夏でも夜は肌寒く、冬の厳しさは有名である。イランへの通過点として使われるが、まだまだ観光は発達していない。それでも市内にはトルコ初期建築の代表作など、最低1日を要する見どころがある。

エルズルムの歴史
何世紀も前から定住は始まっていたものの、エルズルムが歴史に登場するのはビザンツ皇帝テオドシウスが都市を要塞化し、テオドシオポリスと名づけた4世紀からである。その後500年もの間、エルズルムの支配はビザンツ帝国とアラブ王朝の間で行き来していたが、一時アルメニア王国の支配をも受けた。
1071年のマラズギルトの戦い後、エルズルムはセルジューク朝の支配下に入り、その後サルトゥク首領が統治することになる。14世紀にはモンゴル族イルハン朝の支配を受け、さらにティムールの西アナトリア襲撃の出発地点となった。
エルズルムがオスマン帝国の支配下に入ったのは1515年のセリム1世の時代だった。1828年以降ロシア帝国は3度にわたりエルズルムを占領した。1916年-17年の一年間はロシアの保有都市となったが、トルコ国民軍の将軍の一人であったキャーズム・カラベキルにより奪回され、1919年7月にトルコの領土が提案された有名なエルズルム会議が開かれた。

エルズルムの見どころのほとんどはジュムフリイェット通り付近に集中している。
ヤクティエ・イスラーム修道院
モンゴル・イルハン朝の地方領主であったホジャ・ヤクートにより1310年に建築が始められた。正面入口の装飾は手が込んでおり、先の切れた尖塔のタイルは美しく、まるで中央アジアまたはペルシアから取り寄せられた感じがする。メドレセ(イスラーム修道院)は現在、イスラーム・トルコ芸術博物館となっている。展示品の中にはオルトゥ産の石でできた装飾品や、デルヴィーシュ(イスラーム神秘主義僧)の身の回り品などがある。また昔のイギリス領事によって撮影されたエルズルムの写真など、興味深い作品もある。

ララ・ムスタファパシャ・ジャーミィ
16世紀半ばに建てられたモスク。大建築家ミマール・スィナンの作品といわれているが、信憑性は無い。金曜の礼拝になると、このモスクには人ごみがごった返す。

ウル・ジャーミィ
1179年にサルトゥクの首領によって建てられた。大きなホールと、天井を支えるいくつもの柱は当時の建築様式の特徴を担っている。

チフテ・ミナーレリ・メドレセ
2つの尖塔を持つモスクの意。30メートルの高さの尖塔はなぜかムエッズィン(イスラームの礼拝を呼びかける僧)用のバルコニーが無い。誰による建造かははっきりしていないが、セルジューク朝君主アラアッディン・ケイクバード2世の娘であるヒュダーヴェンド・ハートゥンによるものだと考えられている。おそらくシワスにあるギョク・メドレセをモデルにして設計されたが、当時にしてはチフテ・ミナーレリ・メドレセの建築構造は大胆かつ画期的であり、決して完成することはなかった。鍾乳石が使われている正面入口には竜や2つの頭を持つ鷹などが浮き彫りにされており、偶像崇拝を禁止するイスラームよりも遊牧民族のアニミズムを連想させる。

ウチュ・キュムベットレル
チフテ・ミナーレリ・メドレセから250メートルほど南側に位置する公園の中にある3つの霊廟。そのなかで一番古いものは12世紀初頭に建てられた最初のサルトゥク首領の霊廟で、グルジア・アルメニア・初期トルコ建築の特徴が混ざり合った面白いスタイルとなっている。そのほかの霊廟は少なくとも13世紀以降のもので、特に面白みはない。

エルズルム城
基礎はビザンツ皇帝テオドシウスによって築かれた。現在城の内部には小さなメスジット(礼拝所)とミナーレしかない。城の東側にある階段は城壁へと続いており、現在エルズルム城は市内で一番高い場所でなくても、ここからのエルズルム高原の眺めは素晴らしい。

リュステムパシャ・ベデステニ
16世紀半ばにオスマン帝国のスレイマン大帝の大宰相であったリュステムパシャの寄付によって建てられた屋内バザール。以前エルズルムは大陸横断貿易ルートの一つとして栄え、19世紀でさえも4万頭ものラクダを引き連れた隊商がエルズルムに毎年立ち寄っていたという。現在エルズルム商業の中心は黒曜石に似たオルトゥ石で、数珠の生産に使用されている。

考古学博物館
エルズルムの見どころのなかで市内から最も遠く、特に見るべきものがない。ウラルトゥ王国やコーカサスの陶器群や、ローマ・ヘレニズム時代のガラス細工などが展示されている。アルメニア人虐殺論に対抗してか、博物館の一角にはエルズルム県で発見された「1915年から1918年の間に虐殺されたトルコ人の集団墓地」からの出土品などが展示されている。

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